さて、紹介。作者は知らない人の方が少ないとは思うが、サー・アーサー・コナン・ドイル。合ってるよね? なんかこのページに対する意気込みの低さが感じられそうだが、そんなことはないのでよろしく! シャーロック・ホームズの作品は1つにしちゃおうかと思ったが、この長編を他の作品と区別したいと思って 独立させてみました。そして、肝心の中身だけど、これはおもしろい!ホームズ達が本当に追いかけている 事件と、実はそれとは関係無い事件が絡み合って何重もの厚みが出ている。かるーく言えば、バスカヴィル家と いう代々呪われている一族がいて、バスカヴィル屋敷に住むとその呪いを受けてしまう。そして、今また 呪われた屋敷に住む老人が変死をしたのだ。犯人は誰だ?一緒に屋敷にいた執事?執事の妻?近くの湿地帯に逃げ込んだと言う死刑囚? ワトスン(笑)?それとも?おもしろそうでしょ?おもしろいもん。読みましょう!
本編はワトスンがかなり主人公的な構成。ついでだから、ドクターワトスンについても。この人の印象は 結構温厚な人だというのが一般的だろう。たしかにそうだ。しかし、経歴は凄い。元軍医で2度結婚しているのだ。 実はかなりのやり手と見て間違いないだろう。ホームズには物語の冒頭などでちょくちょくからかわれているが、 そういった光景は実にほほえましく、ホームズが超人なだけにワトスンには親近感を覚える。が、それも 実は演技だったのでした(嘘)。(笑)
あと、外せないのはTVでしょう。もはや、本の話をしている場合ではないです。ホームズ役のジェレミー・ブレットは、 希代の名俳優と言えます。人差し指を唇に当てる、服を脱ぎ散らかす、新聞も無駄に散らかす等などの一連の動作など見たら 完全にホームズと言えば彼しかありません。それに、周りの人々も最高です(個人的にはハドスンさんが バッチリはまってると思う。)。このまえまでNHKで再放送してたんですよね。 何度目なんだろ?つまり、見逃した人はまたチャンスがあるってことなんで機会があれば是非見てましょう。 そして、TV版バスカヴィル家の犬。凄かった。犬がホントに光ってた(ややネタバレ)!
では、紹介。激務とおなじみの不摂生ですっかり健康を害したホームズは休養のためにコーンウォール半島に行ったのだった。 しかし、ホームズの行くとこに事件が起きるのはもはや運命。ここでも、事件に巻き込まれてしまう。事件の内容は、 ある朝、館で男女三人兄弟が見るも無惨な状態でいるのが発見される。男二人はすっかり気が狂い、女は死んでしまっていたのだ。 その前夜に実はもう一人男がいたが、彼はその館に住んでおらず夜に自宅に帰宅し、無事であった。彼は三人とは兄弟であるのだが折り合いが悪くいがみあっていた。 こうなると、犯人は誰かは明らかであるが、彼も後に殺されてしまう。果たして、真犯人は?そして、その犯行手段とは?
今作の見所は犯行手段を見つけたホームズはワトスンと一緒にそれを実践するのだが、ここの狂いっぷりである。 本では想像の域をどうしても出ることができないのだが、TVで見たときは・・・それはそれは凄かった。ジェレミー・ブレット演じるホームズ が様々な幻覚を見た後にワトスンに助けられるのだが、かなり迫力があった。やっぱ、TV版見て欲しいな〜。本の紹介なんだけど。 ただ、この事件は犯行手段が特異だから読んでみると良いでしょう(フォロー)!
さっそく作品の紹介を。最初はホームズとワトスンの出会いが描かれ、その後に事件が発生。 人がいない家の二階で男が殺されていた。男の顔には恐怖が浮かび上がっており、外傷がないのに周りには血が。 ホームズは現場検証をして、この事件についての様々な情報を得るが、 後のシリーズでもお馴染みのグレグスン、レストレイド両警部はそれぞれの路線で事件を調べる。そして、 殺された男の秘書だった男が捜査線上に浮かび上がる。が、その男を追っていたレストレイド警部が 持ってきた情報は、その男の死だった。現場の話しを詳しく聞くホームズ。そして、犯人が だれかを確信。果たして犯人は誰か?その動機は?ホームズはなぜ犯人がわかったのか?
シャーロック・ホームズシリーズの原点。ここからホームズとワトスンの物語は始まった記念すべき 作品!そのせいか後のホームズ作品と比べると作風が少々異なる。特に事件の背景が述べられるところは、 この後ではお馴染みのスタイルとなったワトスンの一人称という形が取られておらず、作品自体がココだけ 独立しているようなスタイルで描かれている。俺としては今まで読んできたホームズ作品と比べるとどうしても 質が劣るように感じるが、これはこのスタイルの違いが与える印象かもしれない。さて、ホームズとワトスン の出会いだが、ホームズは奇人変人扱いされているような科学者で、ワトスンは傷が癒えきれず弱っている 元軍医。ホームズはすぐに科学者の下に隠された探偵の顔を出すが、そのときのワトスンのホームズに 対する態度がおもしろい。後々では当然のようにホームズにからかわれても何処か納得してしまうような ワトスンだったが、最初はホームズの探偵理論自体に難癖をつけるような有様。結局、この事件を通じて ホームズの凄さを完全に認めるのだが、こんなワトスンが語られるのはこの作品だけ。ホームズファンは 原点を知るという意味でも是非読んでおきたい一作。
物語は、ロンドンの闇を牛耳るモリアティ教授の配下のものからこれから恐ろしいことが起こるという ことを暗示した暗号文がホームズとワトスンの元に届けられたことから始まる。しかし、その暗号を解いたときに、 殺人事件を告げる警察の馬車がホームズたちの下宿の前に止まった。既に手遅れになってしまったのか?なんにしろ、 調査に向かうホームズたち。しばらく捜査を続けていくと、ホームズはこの事件の全てを見事に解いてしまった。 そして、この事件の犯人から犯行の動機となった過去の出来事が書かれた一束の書類を渡される。そこには、 ”恐怖の谷”と呼ばれた場所で行われていたことが鮮明に書かれていた。犯人は誰か?そして、なぜ 犯人はこのような凶行に及んだのか?全ては一束の書類が語っていた。
この物語をホームズの名推理目当てで読むと、多分がっかりする。ちょっとミステリーが好きな 人ならホームズの解いたトリックは解ける。少なくとも犯人だけはわかると思う。dagonも細かいところは 抜きにしたら、犯人もトリックもわかりました。けど、それ以上に犯人に手渡された 書類の中の人物がやってのけるトラップは爽快かつ意外にハマる。こちらの方が見所だろう。 だから、ドイル自体が好きならばまったく問題はないが、ホームズを楽しみたいのならばこの本は向かないかもしれない。 さらに、小説の半分以上が書類の中の物語であるため、当然ホームズも半分以上出てこないのもポイント。 これは後から知ったのだが、「バスカヴィル家の犬」以外の長編ホームズにおいてはこれが通常のスタイル らしい。最初は「緋色の研究」だけが前後半に分かれているのかと思っていた。 dagonとしては純粋にホームズの超人的で読むものを引き寄せるあの魅力的な推理を期待してこの本を 読んだため、ちょっと残念だった。
ホームズの推理を楽しみたいのなら長編は避けた方が良い。ただし、「バスカヴィル家の犬」は例外。 あれは長編で唯一全編一つの物語として書かれている物語らしく、最高傑作との声もある。dagonも あの作品はホームズが好きなら読むべき作品の1つであると思う。トリックが微妙だけど。 ところで、今作はホームズシリーズ最後の長編とのこと。物語中に”モリアティ教授”の名前が出てくる ところを見ると、まだモリアティ教授が在命中の話しであることがわかる。ということは、ドイルは 長編作成は早い時期にやめてしまったようだ。詳しくは知らないが、ホームズがあまり活躍しないから、 やっぱり人気が無かったのかな?と、思ってしまう。が、これらはあくまでも個人的な感想であるから 、一度は自分で読んでみることをオススメする。dagonはもう短編に走ります。
内容は、インディアン島という島を買い取った謎の人物オーエン氏が10人の人間をインディアン島へ 招待。招待の口実はそれぞれ異なるものだが、いずれも悪くない話しであった。 しかし、島に着いた一行を待ちうけていたのは・・・。インディアン童話に基づいて一人、また一人と 死んでいく。また、誰か一人が死ぬたびにインディアン人形が一つ一つ壊されていく。 童話では最終的に全てのインディアンが死ぬことになっているが、実際に全ての人間が 死ぬということが有り得るのか?だとすれば、犯人は存在するのか?いるとすれば、誰なのか? そもそも、なぜこの10人が招待されたのか?最終的に誰が残るのか? それとも、全員死んでしまうのか?そして、この島を支配するオーエン氏とは何者なのか? 最後の最後まで気が抜けない、サスペンスの傑作だ!
この物語を読み終えたときに、久々に怖くなった。つまり、根っから物語に入り込んでしまったのだ。 それを為せる文体は見事としか言いようがない。推理小説には風景を表す文はあまり必要ないという意見 があるが、この物語において、風景を表すことによって伝わってくる雰囲気、緊迫感は凄まじいものがある。 さらに、物語のほとんど全体で扱われている一人につき一つの段落を用意するという文体は、 今誰が何を考えているかが非常に直接的に伝わってきて、さらに緊張感を高めると共に、恐怖に吸い込ませる。 誰が犯人なのかがまったくわからず、それぞれが自分以外を信じられないような精神状態に入っていく ような描写はこの文体が非常に功を奏しているといって間違いないだろう。また、結末について触れれば、 実は注意深く読んでいればサインが出ているのだ。最後で突然意外な事実が出てくるような サスペンス小説はそれはそれで良いのだろうが、個人的には抵抗を感じることもしばしば。だが、 この作品では全てが計画的に書かれていて、結末を知った後もその過程が納得できる。
ただ残念なことに、動機だけはどうもチープな感じがしてしまった。 殺人の動機などは意外に単純なものだというが、この事件に関しては単純とか複雑とかそういう問題ではなく・・・ まぁそれに関しては読んでくれればワタクシが言いたいことがわかると思う。 さらに書いてしまうと最後の殺人は果たして本当に可能なのか?ということ。ミステリー小説の ネタがバレるのは嫌だから深く書くことは避けるが、どうにもこればっかりは運任せという気が してならなかった。もし失敗していたらどうするつもりだったのだろう?ちょっと野暮なツッコミを 入れてみましたが、とにかく非常に高いレベルで完成されている。ミステリーが好きなら読んでも 損はないというか、読まなきゃいけない本だ。
内容紹介。仕事の件でオリエント急行に乗ることになった探偵ポワロ。だが、二日目の晩、同じ 車両で男性乗客が殺されているのが発見される。外は雪で列車は動けない。被害者の車室の窓は 開け放たれていたが、外の雪に足跡は残っていない。ということは、 ポワロ、被害者、車掌の他に同じ車両に乗り合わせていた12人の中に犯人はいるのだろうか? それとも、やはり外部の人間が!?そして、男が殺されなければならなかった動機はなにか? 乗客、車掌の計13人の証言を基に解決に挑むポワロ。が、その証言も次から次へと 覆されていく。誰がホントのことを言っているのか?そして、誰が嘘をついているのか? ポワロの推理が結末へと迫ったとき、そこには2つの解答が用意されていた・・・。
なんといっても、その結末が新鮮で驚かされる。さすがにミステリーの女王といったところ。 ミステリー作品にこういうことがあっても良いんじゃないかという、根本的なところをひっくり 返した作品だ。よって、これを読むのだったらまずいくつか他のミステリー作品を読んで、 ミステリー作品というものの枠を作っておいた方が良いと思う。この仕掛けは、物語としては 有って然るべきものだか、なまじ枠が出来てしまっている読者にとっては「有り得ない!」と 最初は思ってしまうかもしれない。だからこそ、枠を作っておくべきなのだ。根底を揺るがす 素晴らしい仕掛けだ。賞賛される理由がよくわかる。
ポワロの作品は今回初めて読んだ。しかし、この探偵はフランス人ベルギー人だ。
また、イギリス人がひどく剛直な人物として描かれている。
これらのことと、フランスとイギリスが歴史的に敵視しあっていることを併せて考えて、
アガサ・クリスティーはフランス人なのかと思った。しかし、アガサはイギリス人。
それとは別に、このポワロという探偵は非常に回りくどい推理をしていく。正直、個人的には
途中でしんどくなったところもあった。ホームズと比べるとそれが顕著にわかる。
ホームズは「緋色の研究」において、エドガー・アラン・ポーのデュパン探偵を批判しているが、ポワロのことを
言及することがあればデュパン以上に厳しい批判が向けられたのではないだろうか。
というのも、デュパンの方がポワロよりはるかにスムーズに推理するし、言うまでもなく、そのデュパンより
ホームズはさらにスムーズに推理をする。しかし、ここでアガサがホームズに夢中になって
ミステリー小説の世界に入ったという背景を無視することはできない。
ポワロがフランス人だということをもう一度考えると、「フランス人はこんな回りくどい推理
しかできない。」ということをアガサが皮肉で書いたと考えてみるのも一考だ。まぁ、ポワロは、
わざわざ断ることもないことだが、この他にもたくさんの事件を解決した。ということは、アガサはポワロを
愛していたことがわかる。よって、上の考えは間違っているのだろうが。
多分dagon自身がポワロを好きになれなかったことでこういう考えが浮かんで来たのかもしれない。
とはいえ、再三書いてきたが、最後の仕掛けは非常に驚くものだけにミステリーを語る上では
必読の書だ。臨場感というか、迫りくる恐怖と言う点では「そして誰もいなくなった」には
劣るとは思うけど。
(追記訂正)
ポワロはフランス人ではなくベルギー人でした。フランス語話すからフランス人と
勝手に思ってしまいました。申し訳無いです。
内容は大きく二つに分けられる。前半部は穏やかな別荘の様子が、そこに集まった人々を中心に 描かれている。が、何かが狂い始めている空気だけは読者にも伝わってくる。何かが迫ってくる。 そして、壊れ始めてからが後半部。遊びに来た弁護士が殺され、続いて別荘の持ち主である老婆も 殺される。そして、物語は全てが最後のゼロ時間へと収束されていく!ゼロ時間へと達した時、 犯人が計画した狂気は完成されるのだ!この事件に立ち向かうことになったバトル警視は果たして、 ゼロ時間に達する前に事件を解決できるのか?それとも・・・。
今作もまたミステリーというものの勉強になった。やはりアガサ・クリスティーという人は 天才だ。どういった面で新鮮さを感じたかというと、やはり全てはゼロ時間へ向かって進んでいる という構成。殺人完成=ゼロ時間ということであるならば、その過程から既に計画は始まっているのだ。 多くの作品はまず殺人事件から始まるが、もっと前のその過程から描いたのがこの作品。 素晴らしい構想だし、的を得ている。だが、良いこと尽くしでも無い。推理小説においては 特に前半の殺人という一つのインパクトが与えられることで、 後の色々な情報を注意して読んでいこうという気持ちになるというのは、あながち 見当外れの意見では無いだろう。つまり、殺人というインパクトがない推理小説は弛んだ小説に 思えてしまう。だから、この作品はそういうインパクトがどうこうより、全体の構成として 上手く出来ているという点で、玄人の人が読んで楽しむ本だろう。dagonは正直、クライマックス は別にして、前半部は大方退屈であった。
この作品は男女間のもつれが絡んでいる。アガサ・クリスティー自身がそういった過去を持っている だけにリアリティを感じる。というか、なにやら読んでいるうちにそれが見えてきそうなほど、 感情が作品内に込められている。そして、これを逆に読んでいくことで結論すら・・・ いや、あまり結論について書くのはやめておこう。アガサ・クリスティーの心情がもっとも 反映している作品の一つではないだろうか?とだけ言っておく。
フランス人ではなくベルギー人だと訂正したポワロだが、前回推理の仕方がぬるくて好きになれなかったと いうことを書いた。が、今回の謎解き役であるバトル警視はポワロよりは好きになれた。ただし、 この人はイギリス人らしいが、イギリス人っぽくズバっと答えを出してはくれない。 しかし、それはバトル警視があの並み外れた推理力を持つ人々に比べれば、まったく劣った人物で あることを上手く表現できていると受け取れる。バトル警視は推理力さえ省けば、捜査上でのあらゆる可能性を 考慮して一歩一歩進んで行くポワロよりは遥かに直接的捜査を行っていた。桁外れの驚くべき推理を見ることが できなかった分、この人自体に大きなインパクトはないが、ああいった優れた人物でなくても 謎は解けるものだと庶民に教えてくれた感はある。ただ、この人はポワロの影響を受けている分、 人よりは勘が鋭い。ここまでくると、付き添いのジム(バトルの甥であり警部)くらいがちょうど凡人レベルで、 さらに好印象だ。今書いたことで注意したいのは、バトル警視の推理にインパクトが無いからと言って、 作品自体がインパクトに欠けるわけでは無いということ。クライマックスは凄まじい。 殺人事件を起こす人はきっとこんな感じなのだろうと心から思える。総評としては、前半部の 退屈を感じさせる部分さえ読めれば、あとは素晴らしい。最初は我慢してでもラストに辿り着いて ほしい作品だ。
登場人物は、夏休みをリゾート地で過ごしていたポワロを含む観光客たち。そこで殺しが起こる。 殺されたのは女で極めて魅力的な人物だった。そのために自然と浮気心を男に起こさせるという ほどで、犯人は夫の浮気に怒った妻、もしくは過去にそういったことをされた復讐者、 さらには狂信者、行きすがりの殺人狂などといろいろな推理が飛び交う。そして、捜査が進むに連れて 判明する殺人現場近くの洞窟に隠された麻薬。殺された女の義理の子供である少女の不可解な行動。 果たして犯人は誰か?また、その動機は?ポワロが過去の類似事件に気付く時、その全てが判明する。
これまで読んだアガサの作品は社会が捌けない、つまり法では捌くことのできない悪にスポットを 当てた事件が多い。そして、それも2パターン有って、そういった者に対して法に代わって鉄槌を 振り落とすタイプと、そういうことをした犯人が再び事件を起こすタイプがある。どちらも 結局は破滅が待っているという点から考えると、アガサの性格が見えてきそう。どうもアガサは 狂信者とまではいかないが、正義感が人一倍強かった気がする。では、この作品ではどうだった かというと、他の作品よりはそういった色は出ていない。だから、結構普通の推理小説っぽくて、 逆に言うと、アガサっぽさがやや薄い。トリックの部分でこそ過去と関連があるが、アガサ作品特有の 精神的な部分のことでは関連はほぼ皆無。そういった意味では、作品としては見事であるけど アガサの作品としてみればイマイチだと思う。なんとなく迫りくる緊迫感みたいなものにも欠ける。 分類で言えば、トリック重視の作品ということで「オリエント急行の殺人」に近い。 個人的にはアガサ作品はあの迫りくる緊迫感が好きで、その最高峰が「そして誰もいなくなった」 だと思うし、また同じ理由で「ゼロ時間へ」もかなり好きだ。つまり、この作品は他の作者でも 書けそうな作品だと感じた。
実は今、シャーロック・ホームズを読んでいるのだが、ポワロと何が違うかを考えながら読んでみると 新しい視線で読めて楽しい。ホームズは最初の捜査である仮定を出し、その仮定を基にして その後の捜査を行う。最初以外は自分の仮定を裏付けるための捜査だ。それに対してポワロは 最初から結論付けるようなことは決してしない。とりあえず、事件に関連することを集められるだけ 集めて、それを一つ一つ当てはめて犯人に辿り着く捜査。読んでいて鮮やか且つ豪快で気持ちの良い 推理をするホームズにはやはり読者を引きつけるだけのものを持っていると思う。では、なぜポワロも こんなに人気があるのだろうか。それは、捜査が極めて論理的だから読者がわかりやすいということが 挙げられると思う。ここでそれがわかったから次の段階の推理が出来たのだな。と、思考順序が わかるのは共感を生む。超人的な推理をするヒーロー型の探偵・ホームズと、読者が共に 推理できる庶民派の探偵・ポワロ。この二人はタイプがまったく違うため、当初ポワロを 好きになれなかったが、よくよく読み進めると人気になる理由がわかった。ホームズにはやはり 敵わないが、ポワロも今ではだいぶ好きになったわけで、これからもポワロ作品はたびたび 読んでいきたい。ところで、この作品の途中でポワロはフランス人だと間違えられる。 読者と同じ間違いを作品内でもされていたポワロはやはり庶民派だと思った。 多分、当時もポワロはフランス人だと思っていた人が多かったんじゃないかと思われる。 だから、「それは間違いですよ。」という意味も込めてアガサがこの会話を盛り込んだような気もした。
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