上記のとおり実際の歴史にあまりとらわれず書かれているため、この中に出てくるような人物(仙人) とかは実際にはいなかったわけだが、宝貝(パオペエ)といった仙人もしくはその門下生が使う秘密兵器 や、この革命が実は天界の大編成のためのものだったりとか、ここまでくるとSFっぽくておもしろい。 ジャンプで漫画版封神演義もやっていたから知ってる人もいるかもしれない。dagonも実はそれで知りました。 漫画とこの小説は結構話が違うから、読み比べてみるのも楽しいかも。豆知識だが、うちのバイト先に いる中国人(中国人ばっかなんですけど・・・)に太公望について聞いてみたところ、どうやら彼は 中国では神的存在らしい。さらに、呼び方だが実際には「太公望」とは呼ばずに、「キョウ子牙」と 混ぜて「キョウ公望」とかいうらしい。あと、さっきからあからさまに変換文字が出てこないキョウという字だが 羊の下に女っていう字なのであしからず。
この物語は正直「そんなのありえない!」ってことばっかだから、読むときは歴史を読むというよりは 、それをもとにした全く別のSF怪奇小説を読むといった心持ちの方が良いし、さもないと途中で飽きる 可能性がある。主人公の太公望もといキョウ子牙とそれをとりまく仙人ならびにその門下生達が 強すぎて、相手(商王朝側の仙人及び門下生)がイマイチ光っていないのが残念。ここまできたら、 やっぱ敵にも感情移入できるようにしてほしかった。ただ、昔から中国で語られてた話をこの安能務さん が訳しただけなので要望なんてしても仕方ないのだけど。
最後に、この物語で完璧な悪役にしたてあげられてるチュウ王。ダッ己が狂わせたらしいが、それに してもかなりの狂いっぷりである。もう殺しまくり(この物語は全体とおして敵味方ともにかなり 死ぬけど、それが歴史の裏に潜む本当目的だったりするから仕方ない。)。 そこで、今度(いつかな?)は彼に光を当てている本を次は紹介するつもりだ。 歴史はまだまだ闇の中である。問題は後世の我々がどう解釈するかとか、ホントに定説とおりなのか疑って みたりすることが大切なのだ。
話しはそれるが、滅びにはどうも女が絡む。ケツ王の正妃は妹嬉(バッキ)であり、 彼女と伊インによって夏は滅ぼされた。また、周王朝は設立から三百年ほどで一度滅亡させられそうになるが、その時も周王であった 幽王に褒ジという女が絡む。褒ジというのは「笑わない美女」として有名であったが、何を思ったか 幽王が誤って狼煙をあげてしまい諸侯が何事かと集まって来たのを見て笑ってしまった。幽王はこれに味を占め 、用も無いのに狼煙をあげまくり諸侯の信用を無くした。そして、ホントに攻められた時に諸侯が「またか」と 狼煙を信用しなかったためあっさり攻め滅ぼされてしまった。この場合は、褒ジの責任の他に幽王のバカっぷりにも問題は 多々あるが。ちなみに、これで周は一回終わる。すぐに再建されるが、これ以前を東周、以後を西周といい 首都の位置が異なる。んで、西周の始まりが「春秋・戦国時代」の始まりである。春秋時代に晋の国も、 リ姫という女にめちゃくちゃにされた。詳しくはいずれ「重耳」を紹介するつもりだからその時にでも。 ここで、この悪女達はいずれも中国史上稀に出現する美女ということに注目したい。dagonとしては、 めちゃくちゃ女がいる中でなぜこのような悪女が王の側にいられたのかが気になる。王の寵愛を受けたのは 間違い無いが、美人は他にもいたはずで実は定説になってる「悪女は絶世の美人説」は後世の人が 王をたぶらかした女は美人に違いないと考えたか、または、美人でない女にうつつを抜かしたとなれば自分の 国の王を卑下することになるためこれらの女を絶世の美女に 創造したのではないかと思うのだがどうだろう?
話しが異常にそれたが、物語は商の重臣であった箕子(キシ)を中心に書かれている。箕子はチュウ王 からも一目置かれる(敬愛的な意味で)数少ない人物であり、とても優れた人物であった。結局は、前回の 紹介のように商は周に滅ぼされるのだが、箕子は周には屈服しなかったらしい。歴史的な背景が前回と まったく一緒なので大方の話しの筋は前回参照でよろしく。
やっぱり述べなくてはならないのはチュウ王だろう。名前が受だから受王と呼ばれるこの王は、とりあえず ダッ己が出てくるまでは非常に、それこそ稀代の名君になる素質を持った王だった。ただ、この人物はあまりにも 傑出しすぎていて時代が彼についてこれなかった。これは、自分が優れていることを知っていた受王は 自己慢心が甚だしく、周りの人物をあまり使うことをせず、見下していたため自分が何もかもやってやる という気持ちが強すぎたことに起因するかもしれない。かの有名な酒池肉林。酒で池を作り、周りの木に 肉を掛け、処女の女達を裸にさせて舞わせたものだが、これも、宮城谷さんの見識によると大掛かりな神霊の儀式 ではなかったのではないかとのことだ。言われてみれば、酒に、獣肉、穢れの無い女とどれも儀式に欠かせない ものばかりで、多分この宮城谷さんの説が正しいと俺は思う。これも受王の感性が突出していた 一例だろう。このように、読む本、筆者によって歴史の人物はおそろしいほどその輪郭を変える。どんな 人物だったかを想像するのは最終的には自分達なのだが、まずはいろいろな角度で見ることが大切だろう。 一つの固定観念にとらわれず幅広い視野を持つように心がけましょう。(俺もだけど)
その英雄達の筆頭としてこの時代を代表するのは「太公望呂尚」だろう。ちなみに、太公望が書いたとされる 兵法書「六トウ」は、実は後世の人間が書いたものとのこと。太公望と言えば、陣形立てに強い印象が あるが、本当にああいった陣形を太公望が指揮したのかは謎である。だが、そんなことは太公望を語る 上ではオプションに過ぎず、この太公望と言う人が凄いのはこの革命の形をほとんど一人で作り上げて しまったということだ。頭が良いとかいうレベルではなく、政治手腕(特に外交)が極めて優れていた ことがわかる。そして、そのときの外交の相手に「召」という国があった。その国のセキという君主が この物語の主人公だ。
あらすじは太公望が「周・召・キョウ連合」で商を倒すことを革命の土台に置き、召にこの革命に 参加してくれるよう頼みに来るところから始まる。ちなみに、キョウは太公望の出身である遊牧民族だ。 召との交渉はなかなかうまいこといかず、結局セキの父親が在任中にはかなわず終わった。セキの世代に なって、やっと条件付で召の革命参加が決定される。条件というのは天下を取ったとしたら、西側の実質的な 統治権は召に譲りなさい。ということだった。周も文王の在任中はこの条件に承諾しなかったが、子の武王の 時代になり承諾された。革命は成功。だが、武王がすぐに死んでしまったためバランスが崩れた。そこで、 中国を大きく二分化し、東を秀才の誉れ高い武王の弟の周公・旦が治め、西は幼い周王である「ショウ」を 置き、実質は召公・セキが治めることになった。しばらくすると、東西で反乱が起きた。事態は切迫しており もはや東西の両方を抑えることはできない。西には召の国そのものがあり、セキも西を治めているのだから 西を鎮めれば良いようだが、ここでいろいろなことが起きた挙句に、召は国を捨て東に移ることをセキは 決断する。西の反乱は捨てて、東を鎮めることになったわけだ。ここでのセキの決断がイ夾骨そのものだ。 自分の全てを捧げて他人を助ける。これが鮮やかに描かれている。後に、セキは最高位に昇り周王を 盛り上げた。
20ページの短編をこんなに長く紹介するつもりはなかったが、書き出すとついつい手が動いてしまう。 この物語は太公望が主人公のようで実は召公・セキが主人公である。聡明で先見性があり、男気溢れるこの 君主は、太公望、周公・旦と並んで三公と尊まれた。知名度は三人の中では一番低いかもしれないが、 能力は・・・比べ難い。三人とも稀代の英雄だ。こう並べてみると、革命は成功すべくして成功したように 思えてくる。この時代にピンポイントに英雄が出現しすぎだ。やはり、時代が動く時には見えない何かが 働いているのかもしれない。革命後、旦は自分の能力が極めて優れていたことと、東は東である意味の独裁 をしないとうまく運営できないとの決断で、幼い周王に意見を打診することなく自分で運営を始めた。西は セキが(周王がいるというのもあるが)周りとの調和を図りながら治めた。ここで微妙なのは旦だ。本当に 独立する気はなかったと思うが(あったらできていたと思う)、自分一人で頑張りすぎたため周りから 独立するんじゃないか?と疑いの目を向けられる。人とは難しい生き物だ。こういう疑いを受けずに 統治をしたセキがどれほど完成された人格の持ち主だったかは、比べてみるとわかるだろう。最後に、太公望も まだ生きていたが、地位はあくまでも周の臣下。旦ともセキとも違う。太公望は斉という東方の国に 封じられた。やがて、周王の力が衰え、斉に桓公が現れると桓公が周王に代わって中華を実質治めた。 太公望の血筋が実は一番多くの土地を治めたというのは歴史のおもしろいところだろう。
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